| なんと言っても前日同じくミシュラン3星のビューイーゼル(こっちは4フォークでリルが5フォーク)に行って、感動のディナーを終えているだけに、なにかにつけ比べられてしまうであろう。
胃腸の調子も2軒目となると、不利。また、日本人によるネットでの評判もビューイーゼルは絶賛の嵐だったのに対して、リルは賛否両論、特に塩味が強いというのが気になるところ。 期待と不安に駆られながらのリルに向かう。
20時からの予約。ドアを開けると誰もいないので、奥まで入って行くと、レセプションの女性はカウンターの向こうで座って電話中。サロンにいたスーツ姿のおじいちゃん(2代目シェフの弟でサービス担当のジャンピエール氏)が、慌てて、こちらににこやかな顔で駆け寄って来る。
名前を告げると、こちらへ…とまずはマダム(3代目シェフの妹)のところへ案内される。(このジャンピエール氏はとても感じがよく、食事中も各テーブルを周り、写真を撮ってる客がいれば、すぐにシャッターを押しに走ったりと、常に各テーブルに気を配っていました。)
マダムがいた入り口そばのガラス張りの円形の食堂は、すでに満席のよう。マダムがこちらへ…と早速案内してくれたのは、通路から続く、庭に面した長細い食堂の窓側の席。(さらにその奥に暖炉のある食堂があった)
庭で食前酒を飲んでいる人達がいたので、まだ外は明るいし、時間的にも大丈夫だろうと思い、私達もそうしたい旨を告げると、マダムはテラスに通じるドアまで案内してくれる。
テラスで食前酒を飲んでいるのは他に3〜4組。慌ててウェイターがテラスのテーブルをセットし、席に案内してくれる。しかし…全然メニューを持って来てくれない。
忘れられてるのかなーってくらいかなり長い間(10分くらい?)放って置かれてたと思う。ミシュラン3ツ星とは思えない応対。
ようやくメートルがメニューを持って来てくれる。B4サイズで献立があらかじめ印刷してあるもの。3ツ星にありがちな皮張りの立派なメニューを期待していると「普通」な印象。表紙の絵はジャンピエール氏が描いた水彩画らしい。これは素敵。前日のビューイーゼル同様、女性のメニューにも値段が載っている。
お勧めの食前酒を聞くと、やはりミュスカとのこと。クレマンアルザスはボトルしかなく、シャンパンにリキュールを入れたオリジナルドリンクを勧められるが、結局二人ともミュスカにする。前日のビューイーゼルに比べると、普通のワイン…
さらに出てきたアミューズが、見た目も味も「これって3星?」って品。
・一口サイズのフォカッチャにカニサラダが挟んであるもの
・柔らかいトルティーヤの皮にクリームチーズとベーコンと思われる、しつこい味のクリームが挟んであるもの
・チーズスティック
ネット上での評判が頭をよぎり、ますます不安に…
さて、メニューは事前にファックスでもらっていたので、読みづらいイタリック文字&フランス語表示ながら、一応予習済みなので安心。138ユーロのデギュスタシオンコースは、4品+チーズ、デザート2品と量が多いし、それほど惹かれるメニューではなかったので、最初からアラカルト狙い。
評判の、大きな皿から目の前で掬ってくれるとろとろのフォアグラにも気持ちは惹かれたけど、やっぱりさっぱり系で始めたい。
ザリガニ、牛の胃、オマール、ニシン、手長エビの各サラダの前菜の選択肢の中から、
手長エビのサラダとマグロのマリネ・アボカド添え・レモンのヴィネグレットソース
La salade de langoustines de de thon marine a la amovat ecrase, douce
vinaigrette a la feuille de citron vert) 45euro
連れは
ニシンのサラダ・ポーチドエッグ・揚げたヘリングの卵添え
La salade de barbe de capucin aux 2 harengs (Matjes et Buckling) a
l’oeuf oche croustillant, chips de rattes et oeufs de hareng 33euro
メートルがわざわざニシンのサラダの説明を懇切丁寧にし「お勧めです」と付け加える。
メインはチキン、子牛、羊、リードボー、フォアグラ、二人以上からオーダーできるビーフ、野菜のタルト、春鹿という選択肢から、羊、春鹿、ビーフで迷った末に「8月に春鹿っていうのもね…昨日の二人から注文可というメニューがよかったし」ということで、
牛の骨付きあばら肉・ピノノワールソース・じゃがいものスフレ添え
La cote de boeuf de l’Aubrac poelee, sauce au Pinot Noir pommes soufflees 88euro
別枠にレストラン看板メニューが5品載っていたけど、これが恐ろしくしょっぱいという評判を聞いていたのでパス。
私達のテーブルはソムリエコンクールで優勝したという有名ソムリエではなく、若いチャーミングな英語堪能のソムリエが担当。英語しか話せない客や一見さんには、若い彼が担当するみたい。
ソムリエに「メインがピノノワールのソースなんだけど、アルザスの白ワインを合わせるとしたらどれがお勧め?」と聞くと、最初に選んだのはアルザスのピノノワール。英語が通じなかったのかな、ともう1度「白で」と聞くと、長い間考えこんだ挙句勧めたのは、昨夜飲んだJosmeyerの1997年 TOKAY PINO GRIS。
「実は昨日ビューイーゼルで飲んじゃった」と言うと、「んー僕は不利だなぁ。」とにっこり。しばらく考えた末に「やっぱりこのソースだとピノノワールがお勧めだな。前菜用に白をハーフ取ってあとは赤がいいよ」というので、ピノノワールからの選択ならブルゴーニュのページをゆっくり見たいから、少し時間をください、とお願いをする。
ここのワインリストはおもしろくて、ブルゴーニュやボルドーの赤は年代別に並んでいる。古いのなんて1890年代で
6,000ユーロ!とにかく見てるだけでおもしろくて、このワインリスト貰って帰りたい、だめなら一晩だけでもいいから貸してって思ったほど。
時間を見計らってやってきたソムリエに、めぼしいワインを指差して、「このワインはどう?そうじゃなければ150-180eurosでどのワインをお勧め?」と聞くと、楽しそうにリストを眺め、しばらく考えた後に「それも悪くないけど、これもいいよ。very
interestingだよ。日本では有名じゃないかもしれないけど、とてもいいドメ?ヌなんだ」と言って、勧めたのが
Domaine Meo Camuzet/Nuits-Saint-Georges Aux Murgers Premier Cru 1988 160euro。
カミュゼは日本でもとても有名だし、飲んだことがなかったので、アドバイスに従う。
白は TRIMBACKのリースリングClos Sainte Huneを勧めてきたが、ハーフで60euroだったので、もう少し安いものを、と言うと、同じくTRIMBACKの98年 Cuvee
Freder Emile 36euroを勧めてきた。それに従う。
それにしてもこのソムリエ、とても感じがいい。もっといばってたり、適当にワインを選んだりする人もいるけど、真剣に、そして楽しそうに選んでくれた。ワインをようやく決め、ふと気づくと私達がテラスに残ってる最後の客。すでに20:30を過ぎて、屋外はちょっと寒くなってきたというのに、誰も迎えに来てくれず、またもしばらくその場で待たされる羽目に。(うーん、サービスはいまいち?とにかく混みすぎ。どのテーブルも一杯だし、それに対してスタッフ少ないかも。)ようやくメートルが迎えに来てくれる。
席に着くと、タラのコロッケにセロリの香りがほのかにするクリームが下に敷いてあるアミューズが出てきたのはいいのだけれど、料理だけ置いていって、ワインがサーブされる様子がない。コロッケを食べずに、スタッフの様子を観察。(私達っていじわる?)
目ざとくメートルがささっと寄ってきて、ワインを入れてくれる。(さすが)
しかし、コロッケは、これまた見た目も味も「3ツ星なの?」ってあまりにも普通な代物。かなりの不安。
パンは、ホワイトとブラウンの2種類、私はブラウン、連れはホワイトをもらう。バターは有塩と無塩の2種類が涼しげなガラスの器の上に乗って登場。有塩はしょっぱすぎるし、無塩は味がない、ということで両方一緒に塗るとちょうどいい感じ。
続いて、前菜の登場。
私の前菜は中が生、外は火が通ったマグロと、頭としっぽを取り除いた殻つきの手長エビが交互に5つずつ並べてあって、プリン型のアボカドのピュレが添えてある。前日の前菜のおいしさを思い出しながら、一口ぱくり。「ん??これって普通の味。」
酸味も全くなく、ただ素材だけの味。それが「素材の味を最大限に引出している!」 と狙ってるわけではなく、まるで素人が作るオードブルくらいの普通の味。
しかもアボカドのピュレも普通。3ツ星なら普通に見えて、肉汁とか魚や甲殻類から取った出汁なんかをソースに加えたり、なにか一ひねりして、さすがの味に仕立てるはずなのに、あまりにも味にインパクトがなくてびっくり。
まずくはないけど、その辺の安いレストランでも、いや私でも作れそうな味。前菜ならばやはり食欲を刺激するような、ほどよい酸味も欲しいところ。まさかドレッシングかけ忘れた?一応白っぽいソースみたいなのがかかってたけど、それもインパクトはなかった。
連れのサラダは見るからにおいしそう。酢でしめた、刺身のようなニシンが7切れ。英語でダンデライオン(たんぽぽ)と説明された、barbe
de capucinは、水菜の茎を少し太くしたような、しゃきしゃき感とチコリのようなうっすらとした苦味がある葉っぱ(茎?)で、クリームと醤油、あるいはバルサミコで作ったようなドレッシング
で合えてあって、ニシンの下に敷いてある。一番上にはポーチした後にさらに揚げた半熟卵が乗っていて、さらにその上にランプフィッシュキャビアが乗っている。
そのとろとろの卵とキャビア、サラダと一緒にニシンを食べると絶品。すごくおいしい。これは本当においしい。どうしてこんなに同じ前菜でも力の差があるんだろう。不思議。
そしてこの皿とワインがぴったり合う。このTRIMBACKのリースリングはリースリングなのに。力強い。柑橘系の洗練された酸味と苦味、熟成したボリューム感があり、ふくよかで、しっとりした感じ。完全にDRYで甘味はゼロ。実においしいリースリング。
さて、メインの前に赤ワインが登場。デカンタージュをしてくれる。ソムリエが、味を確かめてにっこり。色は新しいワインのような、レンガ色でない色で、深紫でとても16年ものとは思えない。今まで飲んだブルゴーニュの中で一番強いタンニンを感じ、タンニンの強さで言えば、一瞬ボルドーかと思うほど。16年目ながらまだまだ上り坂の途中の印象。飲み終えるまで強さは変わらず(衰えず)。
家に帰ってきて調べてわかったことは、88年は、カミュゼで、あのワインの神様アンリジャイエ氏が手がけた最後の年だったらしい。こんな超レアなワインをこの価格で飲めるなんて、勧めてくれたソムリエに大感謝。そう言う意味で、リルもビューイゼールともワインと料理の完璧なるマリアージュを生み出した優秀なソムリエに会えただけでも価値があったかも。
そうしているうちに、メインのCote de Boeufが厨房から登場。なのに、そのまま私達のテーブルから離れた配膳テーブルの上でカットし始めてる。こういうのはやっぱり先に「ビーフでございます」って見せてから切るものじゃないの?
ともかく、そのビーフは骨付きの1キロサイズ。大きめに3切れずつカットしてそれぞれの皿にインゲンのバター炒め、薄いジャガイモを揚げて中が空洞になったものと一緒に盛って、バターたっぷりのやや甘めのピノノワールソースをかけてくれた。
肉そのものは極上ってわけじゃない。まぁ質のいい、あっさりした肉って程度。ドミグラソースが苦手な私としては、こういうバターの濃いソースはちょっと苦手だが、連れはソースは絶品と絶賛。特にワインとのマリア?ジュが最高とのこと。
お代りはいかがですか?と残っていた4切れが乗った皿を見せられたが、さすがにビーフはお腹が重くなってギブアップ。
デザートとチーズはパス。そういえば最初のメニューにデザートは載っていなかったし、ここは最初に頼まなくてもいいらしい。
プチフールは卵型の、サイズは卵を倍にしたような大きさの容器に入った砂糖がけのナッツ&ポップコーン、チュイール、ブラックベリー・キーウィ・ストロベリーのミニタルト、エクレア、ローズマリー味のホワイトチョコムース。
コーヒーを頼んでもチョコは来ない。配膳テーブルの上に置きっぱなしの、銀のトレイに山盛りのチョコが乗ってるのに…というわけで「チョコください」(笑)。 するとトレイを持って来て自分でとれ、ってなもんで…
コーヒーのお代りはいかがですか?と感じのいい女性スタッフが聞きに来てくれる。トイレに行くとき、連れにはすかさずメートルDが寄ってきて、トイレの前まで案内してくれたらしいし、ナプキンもすぐにたたみなおしてくれていたけど、私の時は誰も教えてくれる様子がないので、若いウエイトレスに聞いたら、トイレに続く通路への入り口はるか手前から「あっち」って指差すだけだから、一瞬どこへ行ったのいいのか迷った。
通路には、日本の皇太子やアランドロンなどの有名人が来た時の写真が飾ってあって、しばらく眺めて楽しむ。席に戻ると、私のナプキンはそのまま…(気が利かない)
会計 394euros(水ハーフボトル4、食前酒@7、コーヒー@7含む)を支払い、優秀なソムリエにチップをはずみ、席を立つと、入り口にシェフがいたので挨拶をしてから、レストランを後に。
デザートを抜いたせいか、思ったより苦しくないし、なんと言っても目の前にホテルあるし楽勝。ふと、隣の教会の屋根にあるコウノトリの巣を見上げると、雲にかくれた月のわずかな光に照らされて、「何か」がいるように見える。明かに巣の中に何かがいる!コウノトリか??
味はニシンはかなりおいしかったし、牛も悪くないけど、アミューズ類と手長エビの前菜は星つきとは思えない平凡さ。ワインは最高。サービスは悪くはないけど、3ツ星レベルかどうかといわれると、もう少しがんばりましょうって感じ。ロケーションは最高。
もう1度行く?って言われたら、季節のいい時期のランチタイムに、あのワインリストを見に、そしてあのソムリエに会いに行こうという感じ。
(店内の様子・客層) = 店内は白と緑を基調とし、大きな窓からは敷地に面したイル川と柳が見えます。
特にランチタイムや暗くなるのが遅い夏の夜にお勧めです。客層は常連と思われるおじいさん・おばあさんの夫婦から、若者のグループなど様々。場所柄ドイツナンバーの車も多かった。
(スタッフのようすや対応) = ほぼ満席のテーブルに対して、ややスタッフの数が足りず、待たされることが多
々あったし、3ツ星ならではのパーフェクトなサービスを期待すると、あれれ?と思うことも。ジャンピエール氏、メートルD、ソムリエなどしっかりしたサービスをする人もいるのですが…
(日本語・英語対応) = メニューはフランス語表示のみ。読めなければ、英語を話すスタッフが英語で説明をしてくれるはずです。
(予約方法) = インターネット
(10点満点で何点?) = 9点
(アクセス) = コルマールの北約5キロのIllhausernという町
(支払い方法) = クレジットカード可
(ロンドンのスノーマン様 2004年8月下旬)
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