ジャンダルメン広場の近くにある高級ホテル・ザ・リージェントの1階にあるレストラン。ミシュラン1つ星。
昼食。東京のフランス料理レストランがミシュランの星をとりまくっていたが、最近思うのは、「本当はどうなの、フランス以外の国のフランス料理」。ドイツではどうなのか、怖いもの見たさに入店。入口でメニュー表を見て「うわっ、高いな」と言っていたところに、見つけた給仕がにこやかに「どうぞ」と言ってきたから、はいらないわけにはいかない。
入口のメニューは75ユーロの定食が最安だったが、「ビジネスランチ」のメニューも給仕が持って来てくれた。これは、安い。前菜、主菜、デ
ザートのうち2品で28ユーロ。全部なら36ユーロ。1皿だけでもいいとある。それも、前菜、主菜、デザートは、それぞれ6種類くらいから選べる。レスト
ラン名に「漁師」がついているだけに、魚の皿が多い。お味見といったところだろう。このビジネスランチを選択。
薄いせんべいのような付きだし。チーズ味。このあと、小さなパンプキンのムースが出てくる。上にはサイコロの形をした鴨肉。その上に、ゆ
でたイカを薄く切ったもの。肉・魚・野菜の3つが一体となって、繊細な味わいの調和を奏でるという感じ。「ベルリン、じつは凄いんじゃないの」と思った瞬
間であり、この先、期待感が高まる。
私の前菜は、鰻の燻製。鰻の燻製と野菜を重ね、その上に緑のムースがのっている。燻製は細長い長方形に切られ、横には香草をゼリー状に固
めたようなもの。緑が映え、見た目に美しい皿。味も繊細かつ、シャープ。都会の最先端をいっているような味。お試しコースなのか、量が日本のレストランよ
りも少ないくらいで、もっと食べたい私にはそれが残念。それくらい、味わい深い。「ドイツ人、じつは繊細で、センスもいいんだな」と見直した瞬間。
家族の前菜は鶏肉だが、鶏肉はあとかたもない。白いムース状の下には、タマネギの酢漬け。その下には、タマネギの皮を揚げたもの。じつは
白いムース状のものの正体が鶏肉で、鶏肉をミキサーか何かで細かく砕き、クリームと香草で味付けしたもの。これと2種類のタマネギをからめて食べる。独創
的というか奇想といおうか、舌と鼻から脳天にビシンと何かが来るような味と香り。どこかに室内楽的な調和を感じる。
私の主菜は、タラのポワレのようなもの。あとで、給仕がグリーンのソースをかけてくれた。付け合わせに、牛の頬肉と野菜のミジン切りを緑の
葉で巻いたもの。これまた、魚を中心にしながらも、そこに肉と野菜も幸福なマリアージュを遂げた格好。魚の味が引き立ち、しみじみと美味しい。重さ、しつ
こさというものがほとんどなく、上等の和食と共通するような何かさえも感じる。「参りました」といったところ。
家族の主菜は、カレイのポワレ。深い皿で供され、下に緑のムース。上からはサフランソースを給仕がかける。シンプルだが、見た目も美しく、美味。
このあと、デザート前の一皿。プリンのような食べ物の上にラズベリーがのり、ジンジャーがかかっている。その上にシャンパンを使った泡状のもの。「いいねえ」という感じ。
私のデザートは、半液体のチョコ。これは飲み物として出てくる。マンゴーのソルベの下にはチョコクッキー。不思議な味がしたのは、バナナの
周りに薄くパンを巻いて揚げたもの。私はバナナを好きではないが、バナナとは思えない、新種の何かを食べているような気がした。ある意味、この日、一番の絶品。
家族のデザートは、チョコケーキ。バニラアイスの下にはチョコクッキー。美味しかったらしい。
食後にコーヒーを勧められ、家族はエスプレッソ5・5ユーロ。カプチーノ7ユーロもあると言われ、私はこれに。このカプチーノの泡がじつにきめ細かく、美味い。それほどカプチーノを飲んできたわけではないが、いままで飲んできたカプチーノの中でもっとも美味しいと感じた。コーヒーにまで繊細な神経が行き届いているレストランなのか、それとも、食後のコーヒーを実質以上に美味しく感じさせるほど、それまでの料理が美味しかったということか。
ワインリストは、中央テーブルに置かれた大きな箱の中。そこから、おもむろに取り出してもって来てくれる。給仕の表情にも「凄いだろ」と出
ている。ワインリストは、ぶあつい。フランスワインもドイツワインもあれこれある。ついに日本では幻のワインとなったジョルジュ・ルーミエのシャンボー
ル・ミュジニー2005が115ユーロ。高いといえば高いが、いまの市場価格からすれば相対的に安いと思う。リースリング1杯が11ユーロ。ちなみに、
シャンパン・ルイ・ロデレールが1杯18ユーロ。これは高い。水が9・5ユーロでこれも、それなりに高い。やはり高級レストランと諦めるしかない値段。
夜は、前菜・主菜・デザートをアラカルトで頼んで約100ユーロといったところ。けっこう値は張るが、それでも訪れてみたくなるレストラ
ン。ビジネスランチでこれだけ美味いのだから、まともな皿はいったいどんな格好で出てくるか想像すると、せっせと稼ぎお金を貯めたのち、行ってみたくな
る。労働意欲も起きる。
今回のテーマ「本当はどうなんだろう。ドイツのフランス料理店」の答えは、高レベルにあるんじゃないか一言。(1軒だけではねえ)ただ、
フランスにはない、どこかにべつの価値観も加わったレベルの高いフランス料理店ともいえる。どちらかというと、日本で見かけるいくぶん日本化したハイレベ
ルのフランス料理店に近い何かを感じる。どこか共通の繊細さがある。
(店内の様子・客層) = 天井が高く、豪華、荘重。平日の昼ということもあり、客はほんの数組。中高年のお金持ち夫婦か。
(スタッフのようすや対応) = 給仕も愛想よく、テキパキと動く。サービスをどちらかというと苦手とし愛想のないドイツの普通のレストランからすれば、ここは異国状態。
(日本語・英語対応) = 英語OK。英語のメニューも。
(予約方法) = 飛び込みで。夜なら予約が必要でしょう。
(10点満点で何点?) = 9点
(アクセス) = ジャンダルメン広場の西側の通り・シャルロッテン通りの西側に面し、ザ・リージェント・ホテルの1階。ホテルの玄関からはいり、左の奥まったところ。
最寄りの地下鉄駅は、フランツェージッシェ・シュトラーセ駅。徒歩3分程度。
(支払い方法) = VISA(2008年4月中旬 葦原のしこお 様) |