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 ロメールの秋 様の紀行
2

27 Apr.2009 

 

(2008年9月 ロメールの秋 様)
 
 


 
1 成田〜パリ〜ロンドン
ウォーレス・コレクション
ロンドン泊
The Connaught
2 ナショナル・ギャラリー
3 コッツウォルズ地方
カッスル・クーム、マームズブリー、バイブリー、バーフォード
4 テートギャラリー、ケンウッド・ハウス
5 ロバート・アダムの館巡り
サイアン・ハウス、オスタリー・パーク

6 ロンドン〜パリ
ルーヴル美術館、装飾芸術美術館
パリ泊
L'Hotel
7 発熱で一休み
ルーヴル美術館
8 コニャク・ジェイ美術館、フランス歴史博物館、ニシム・ド・カモンド美術館
パリ〜成田
機中泊
9 〜成田着  
  

 
 
2日目  
5時に起きる。窓から外を見て、雨が降っていないことを確認してから、ベッドの中でごろごろする。

知らぬ間に寝てしまったのか、次に起きたのは9時だった。

お腹がすいたよ。とつぶやきながら、部屋に届けられた日経新聞とロンドンのガイドブックを持って、朝食室へ。

朝食はギャラリーという、カジュアル・レストランでいただく。通りに面したガラス張りのサンルームといった感じで、朝日が優しくこぼれかけている。
 
 

世界経済がだんだん落ちていき、ポンドやユーロにしても、日々落ちていくが、いつか止まるだろうと思っていた頃のことだから、私はのんびりしていた。

コンティネンタルにハーブのオムレツをいただく。

朝食を終え、新聞とガイドブックを部屋に届けてもらうようレセプションに頼んだ後、コンシェルジェデスクを見ると、コロラドさんがいるので、朝の挨拶をする。

ナショナル・ギャラリーに行くのでと、タクシーをお願いをする。ホテルの外まで連れて行ってくれ、ドアマンがタクシーを呼ぶ間、コロラドの日本旅行の話を聞く。 

ナショナル・ギャラリー  
タクシーでナショナル・ギャラリーに着く。歩いてこれる距離かなと思うが、美術館は既に空いている。今日一日で回れるかどうか。

朝日が、トラファルガー・スクエア越しに指している。
 

この美術館も、フリー。入り口で日本語のオーディオを借りる。でも、本当に有名な、限られた作品の解説しかしてくれないので、少し残念。

ナショナル・ギャラリーは、コンパクトだが、美術の教科書に載りやすい典型的な傑作が多い美術館だというイメージを私は持っていました。

実際、板張りの中世から、マザッチオやウッチェロのようなルネッサンス初期を通り、スーラの新印象派の作品が、歴史順に並んでいる。

どの国も西洋美術館を持っており、それらは中世かルネッサンスから、印象派や現代までという歴史的配置でコレクションを展示しているだが、このナショナル・ギャラリーの特徴は、やはり粒ぞろいで、しかもコンパクトなため、疲れずに見ることが出来るところだと思う。

図書館で言うならば、街の総合図書館に近く、代表作が揃っているという感じだ。

シャルダン  
とはいえ、大きな美術館。今回の目的である18世紀フランス絵画からスタートする。

フラゴナールもあるが、私にとって、この美術館のメインは、ジャン・シオメン・シャルダン。

フランドルの室内画とブルジョワの風俗画のよき伝統を、フランスの光を通して、フランスの感性として完成させたシャルダン。

彼の影響は、コローを通して、印象派まで届く。
 
 

フランスの白い光は事物を親愛なるものとして表出させ、人間性は外からの倫理や真理ではなく、人間自身と自然内部によって完成することが出来るという確信こそが、フランスが西洋絵画に与えた最も重要な出来事だと、私は思っていえる。
 

どの作品でもそうだが、シャルダンの描く子供の肌の白さ。貴族の肌の陶器のような白さではなく、太陽の光を照り返す月のような白さ。溜息が出るほど、美しい。

至芸は、何度も見ても美しい。

イギリス絵画
番号を少し飛ばして進んでいくと、ゲインズバラ、ホガース、レノルズ、ロレンスの傑作に出会える。コレクションの数でいえば、明後日訪れる予定のテート・ブリテンの方が素晴らしいが、粒はこちらの方が優れているかもしれない。

歴史画ではなく、肖像画、風俗画で活躍した彼らの力量は、アカデミックな芸術理論から開放された現代人から見ると、ただ素晴らしい。イギリスと言うものを見過ごしていた私は、これから学ばなければならないことが多いのだろうと思った。
 

番号を戻ると、ターナーとコンスタブルに出会える。

この美術館のターナーのコレクションは本当に見事である。ターナーは明らかに最も重要な画家の一人であり、スリリングな影響を今でも与えることが出来る画家だと思う。
 

偉大な力量を持った画家が、好きなように描いていいよと言われたら、人生をかけて、どのような絵画を描くのだろうかというケーススタディのようだ。

様々な手法、モティーフ、感情を自在に使って描いていく。彼の一環とした主張と言うものがあるとすれば、描きたかったものを描いたと言うことであろう。

絵画を通して主張したい言説があるはずであり、その心の暗闇を鑑賞から分析し、罠にかけて、曝しだすべきだと言う、心理主義的鑑賞とは全く無意味に存続する、本当の唯美主義がここにはある。

本当に盗んでしまいたい絵だ。

ザ・ナショナル・カフェでランチ
その後、カナレットとグアルディのヴェネツィアの絵画を見ていたら、12時を回ってしまった。(ヴェネツィアには来年行こうと決心する)

この美術館には、フランスでいうところの、カフェとブラッスリーとレストランという3つの食事処を持っている。

時間を考慮して、ブラッスリーにあたるザ・ナショナル・カフェでランチを取る。モモ肉とリゾットのプレートランチとコーラを飲み、体力を回復させる。

このカフェは、トラファルガー・スクェアに面していて、太陽がさんさんと入り、とても明るかった。


 
 
ターナーとクロード・ロラン  
後半は、ターナーとクロード・ロランが2作ずつ合い並んでいる小部屋からスタートする。その部屋に行くまでに、ダ・ヴィンチやホルバインに目を奪われ、足を止められたが、どうにか到着。

理想的風景と呼ばれる風景を描いた、イタリアで活躍したフランス人画家、クロード・ロランがどれだけイギリス美術・庭園・美的意識に影響を与えたかは、計り知れないと言われる。

確かに、イギリス人が好む、失われた古代は、ルネッサンスで見つけられた古代ではなく、クロード・ロランの絵画の中に見つけられるのは事実だと思う。
 
 

その絵に直接的な受け答えしたターナーの絵が、その横にかけられている。
与謝野晶子の源氏物語と紫式部の源氏物語が並べているようなものである。同素材を、二人の天才が己を信じて、応えていくという、なんともスリリングな小部屋。
 

人間はその生まれた時代を超えることが出来ないという主張は、歴史主義の当然の前提だが、私と彼らの出会いによって、その時代を超える空間を作ることが出来る以上、私達人間は、時間を超えた存在であると言えるのではと思う。
 
 

本当に涙がこぼれそうになった。
 

この後も、レンブラント、ムリョーリョ、ルーベンス、ゴヤ、ティツィアーノの抗えない力量に驚き、舌を巻く。

最後に新印象派、現代へ  
新印象派の部屋に入る。時間は、3時を回っているせいもあるが、大変込んでいる。

しかし、なんと明るいのだろう。深みを帯びるほど素晴らしいと信じていた世界から、輝きが眩しいほど素晴らしいと信じている世界へ飛び込んだための眩暈だ。

セザンヌの水浴、色彩が3次元の彫刻よりもマッス(塊)そのものの存在を表している。

かたやゴッホの色彩は、キャンバスにゴッホの信じていたものを押さえ込めるように塗り込められている。
魂を丸ごと色彩として表さなければ私の絵は絵でない、というゴッホの偉大なる試み。

ここのマネとモネとドガの傑作は、オルセーに匹敵する。
 

最期に、スーラ。何故この傑作が、ロンドンにやってきたのか私は知らないのだが、これこそオルセーが喉から手が出るほど欲しいはずだ。

静謐が、労働が休みの日曜、セーヌの河畔に存在する。単に生きているからこそ得られる、静謐さを見つけ出して描いたこの絵画は、ただ素晴らしい。

しばし頭休め  
もう16時を回った。売店でガイドブックと絵葉書を買い、美術館を出た。

頭がボーっとなってしまっている。目の前のトラファルガー・スクェアでは、デモ隊がデモを行っている。

その横を通り過ぎ、ホワイトホールを抜け、ビックベンに近づく。20年前に来た時に一番心に残っていたのが、このビックベン。写真に収めて、タクシーを拾い、ホテルに戻る。
 
 

頭を休めるために、プールで泳ごうと考え、コンシェルジェにバークリー・ホテルのジムを予約してもらう。

(コノートはバークリーとクラリッジズとグループを組んでおり、バークリーのジム・スパとクラリッジズのエステを利用することが出来るとのこと)

バークリーは8階建ての建物で、その8階に15メートルほどの小さなプールがある。天井が空いていているので、プールにぷかぷか浮かびながら、秋の青空を仰ぎ見、今日の絵画を思い返す。

しばらくすると、天井が8割ほど閉まってきた。太陽が、隣のビルにさえぎられ、寒くなってきたので、シャワーを浴びてホテルに戻った。 

ギャラリーで夕食
ホテルをコノートにした大きな理由の一つは、このホテルが、サンジェルマンで腕を振るっていたエレーヌ・ダローズのレストランがあること、また、簡単なカジュアルダイニングがあることだった。ロンドンでは、毎日ホテルの外に夕食に行くのは好まなかった。

また、フランスと英国は、特に上流階級になるほど互いへの憧れが強く、ダローズにしても、英国的なフランス料理にすることなく、よりフランスらしいフランス料理を作ることが英国人に喜ばれると言うこともあり、フランスに慣れ親しんでいる私には、都合の良いホテルだった。

今日は、ギャラリーで夕食。主菜はイタリアンで、単品でクラブ・サンドウィッチやハンバーガーがある。

前菜を生ハムとグラスの白ワインにして、主菜はスパゲッティと赤ワインにする。仕事をしながら、夕食をとる人もいて、かなり気楽なレストランだった。

まだ夜も早いので、メイフェアの夜の散策へ出る。とりあえず、近くにあるクラリッジズを目指し、ボンド・ストリートに出る。寒くもなってきたので、そのままホテルに帰ってきた。
 

明日は、コッツウォルズに個人ツアーで行くので、朝が早いため、ウェイク・アップ・コールをお願いした。

ベッドに入り、読書をしながら、いつの間にかに就寝。



 
 

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